シリーズとしてのテーマと当時の社会風刺

『ブレス オブ ファイア』がシリーズを通して掲げるテーマには、肉親や親しい人との死別や離別が挙げられます。本作には実に様々な別れが描かれており、後の作品へ繋がる流れを作ったといえるでしょう。平穏と安寧の日々を奪われた天涯孤独の主人公リュウと、同じく独り身の浮浪少年ボッシュ。2人の旅立ちは親類との離別に始まり、そして多くの仲間との出会いを通して、彼らの肉親との死別をも経験していきます。本作は、親しい人々との別れを経て成長を遂げていく主人公たちと、その心境の変化を密接に描いています。

 

また、本作のストーリーには開発当時の社会風刺が多分に含まれています。奇しくも発売当時の90年代初頭から中頃は、新興宗教の台頭や世紀末を目前に控えたオカルト思想など、社会に影響を与えた話題が多く立ち上った時代でした。それを象徴するかのように本作で描かれているのが宗教と信仰にまつわるエピソード。信仰心というテーマが物語の主軸に走っています。ネタバレになるので多くは語れませんが、終盤にはかなりショッキングな内容も含まれており、穿った見方をすれば実に社会派な作品といえるかもしれません。


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近年の『ブレス オブ ファイア』作品に見られる要素を多く含有した本作は、シリーズ第2作目にしてリュウ系譜を築き上げた原点のような作品。一見ユーモアあふれるポップな作品ですが、その中心には骨太なストーリーと強いメッセージが込められています。数多の名作RPGが世に送り出された90年代中頃はまさにSFCの黄金時代でした。『ブレス オブ ファイアII 使命の子』は、獅子奮迅の勢いで渦巻く時流の中で生まれたファンタジーの王道。正統派の名に恥じない不朽のRPGといえるでしょう。

 

 

 

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